血管交換シヨ?

「スズ、もう帰るね」

「帰んの?お出掛けしなくていいの?」

「いい。ツキくんは小説書かなきゃいけないんでしょ。邪魔したくないから」

あ。
今のちょっと嫌な言い方…。
伝わっちゃったかな。

「拗ね拗ねスズちゃん」

「からかわないでよ!」

「ごめんー。スズ、おいで」

「やだ。いかない」

「いいの?」

「スズが拗ねたからって無理して甘くしてほしくない」

「えー?俺がスズとくっつきたいのに?」

「じゃあツキくんがこっちにくればいいじゃん!」

「あはは。そうだね、ごめん」

「…帰るね」

「スズ」

「なに…」

「小説、頑張るから待っててね。傑作が書けたらいっぱい、スズがしたいこと一緒にしよう」

傑作が書けたら。

書けなかったらツキくんはいつまでも
スズを見てくれない。

ツキくんはどこまでもどこまでも、
小説中毒者。

そんなツキくんだから好きなのかな。
ツキくんの夢だからスズも好きになりたいのかな。

いつか美桜ちゃんみたいに
ツキくんが大事にしている小説にすら嫉妬し始めたら、
小説を応援できないスズのこと、要らなくなっちゃうのかな。

どっちにしたって今のスズは全然いい子じゃないし
可愛くない。

ちょっと人より特別になったからって
こうやって独占欲とか我儘を剥き出しにして困らせている。

いい子でいなきゃ。
ツキくんが小説を書くモチベーションだけは奪っちゃダメなんだから。