血管交換シヨ?

「何回も読むね」

「そのうち長編も完結するから。また送るよ」

「ほんと…?読ませてくれるの?」

「スズに読んでほしいんだ。でも欲目で見ちゃダメだからね?」

「欲目?」

「俺のことが好きだからって、贔屓した評価はしないでってこと」

「はぁーい」

少し前までは好きだって言うことすら難しかったのに
今ではツキくんがきちんと認知してくれるくらい、スズの気持ちが伝わっていることが嬉しかった。

「でも、スズは元々読書家じゃないからあんまりいい感想とか言えないかも」

「いいんだよ、それで。だからこそ純粋な感想って感じするじゃん」

「そっか。分かった。楽しみにしてるね。小説書きながら音楽聴いてるの?器用だね」

「歌詞までしっかり聴いてるわけじゃないけど。大体小説のイメージっぽい曲流すようにしてるんだ」

「へぇ。今はどんなの聴いてたの?」

「これ」

アップテンポなのに
どこか憂いを帯びたボーカルのハスキーボイス。

聴いたことのない曲だけど
読ませてくれた短編に合っている気がする。

「小説の解像度上がるね」

「でしょ。今からどうする?どっか遊び行く?」

「お外?」

「もう大丈夫でしょ。誰に見られたって」

自虐みたいにおどけて笑いながら
ツキくんはワーキングチェアから腰を上げた。