血管交換シヨ?

短く息を吐いたしろちゃんは天井を仰いで
ゆっくりと瞬きを繰り返した。

スズは今でもツキくんとしろちゃんを天秤にかけられないまま、
本当に大切なものを失う覚悟もできていない自分が
美桜ちゃんや中原くんに偉そうに豪語したことがたまらなく恥ずかしくなっていた。

ツキくんさえ居ればいい。
誰に理解されなくてもツキくんだけがスズを知っていてくれればいい。

そう思っていたのに、
スズはしろちゃんを失くせない。
こんなにも怖い。

スズの覚悟なんてそんなものだったのか。

それだけの覚悟で、
人の恋を壊して、泣かせてしまったんだ。

「しろちゃん…スズは…ツキくんを忘れなきゃいけないの?」

「鈴芽。私達まだ十六歳だよ」

スズは、夏休みが終わるちょっと前に十六歳になった。
その日、たった一言「おめでとう」ってツキくんがくれたメッセージを思い出して、泣きそうになる。

「うん」

「これから先さ、どんな場所で生きて、どんな人に出会うかなんて分かんないじゃん」

「うん」

「もっと世の中を知ったらさ、きっと新城くんより素敵な人なんてわんさか居るよ」

ニッて口角を上げて笑うしろちゃんに、
釣られてスズもちょっと笑った。

「そうかもね」

「それでも鈴芽は、″先のことなんてどうだっていいからツキくんにだけそばに居てほしい″って言うんでしょ?」

「それは…」

「私はさ、恋愛経験が豊富なわけじゃないし、正直今は好きな人もいない。鈴芽みたいに大きな恋をしたこともない。だから鈴芽の気持ちを理解しろって言われても全部は難しけど。鈴芽の親友として、幸せになってほしいとは思う。すごく、当たり前に。今の恋愛はきっと鈴芽を幸せにはしない。苦しいことのほうが多いと思う。それでも鈴芽が、その恋を捨ててしまったらもっと苦しくて生きてけないって泣いちゃうのなら、私は鈴芽に生きててほしいから」

「しろちゃん」

「正しくなくても、鈴芽がそれを正しさに捻じ曲げるのなら。親友だから、見ててあげる」

「っ…」

「一緒には堕ちてあげないけどね?」

「堕ちてくれないの?」

「鈴芽が堕ちた時、誰が引っ張り上げんのよ。私しかいないでしょ?一緒に堕ちてたら救いようがないじゃん」