クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない

「……え?」
「このままでは、乗合馬車に乗れません。しばらくは、リザンブルグ(ここ)で仕事をするしかなさそうですね。住み込みの仕事を探しましょう」
 その時、停留所の建物の影から、聞き覚えのある声が聞こえた。

「住み込みの仕事ですって!?」
 そう言って姿を現したのは、セイラだった。

「セイラ!?」
「セイラ殿!?」
 セイラは、最初に出会った時と同じ格好をしている。また城を抜け出してきたようだ。先ほど別れを告げたばかりだと言うのに、どうやって先回りしたのだろうか。

「それなら、お城に来ればいいじゃない! ちょうど、侍女が一人辞めて困ってたのよ〜」
 セイラが、キラキラした目で見てくる。

「わ、私は剣士だ!」
 ノキアは貴族としての礼儀作法こそ習得してはいるが、家事などの花嫁修行はほとんどやらず、剣術の修行に明け暮れていた。自分が侍女などできるわけがない。

「あら、私の世話をしてもらうんだから、家事能力は必要ないわ。ねぇ〜? デュランも、ノキアのメイド姿を見てみたいと思わない?」
「う、うむ……。そうですね……」
 デュランはノキアのメイド姿を想像してしまったのか、咳払いをした。心なしか、顔が赤い気がする。

「ノキアなら、私の影武者にもなれるし、お給金ははずむわ!」
「それはありがたい!」
 デュランも乗り気になり、裏切られた気分になった。

「い、入れ替わりはもうゴメンだってばー!」
 セイラから逃げるように、デュランの周りをくるくると移動する。
 リザンブルグの平原で、ノキアの叫び声が響いた。