逃げ道を探すには遅すぎた

（二人とも、どうなったんだろう……。無事に帰れたのかな……）

とりあえずいつまでも座り込んでいるわけにはいかず、歩き出す。この時代に当然私の行く宛などない。歩いて寝床になりそうな場所を探す。

階級制度が根強いこの時代は、貧富の差がとても激しい。裕福な貴族層はほんの数%なんだけど、この国はその貴族層に支配されている。

労働者階級の人たちは仕事があるから、住むための家などもあったりする。それより下の階級になるとあまりにも貧しく、路上での生活を余儀なくされることも珍しくない。今も、視界の端に家のない人たちが座り込んでいるのが見える。

（私も一番下のアンダークラスだよね……）

ずっと歩き回っているとお腹が音を立てた。近くにはパン屋さんがある。でも私はこの時代のお金を一円も持っていない。

（盗むなんてできない……）

グッと唇を噛み締めてパン屋さんの前を通り過ぎた。お腹はさらに大きな音を立てて空腹を訴えるけど、盗むなんて犯罪だ。絶対にしたらいけない。