もう一度

「はい、」

「おすすめの本、教えてくんね?ひまでさ。」

なんだ、そんなことか。

そう思うと同時に、ノートの端っこをちぎって、本の題名を書いた。

「これ、どうですか?」

メモを佐竹くんの手に握らせる。

「この本は、サッカーが大好きな男の子が怪我で夢を追えなくなって、ふさぎ込んじゃうんですけど、ある人によってどんどん立ち直っていくんですよ。この図書室のあそこにもあるので、ぜひ借りてみてください!!」

私は少し遠くの本棚を指差した。

佐竹くんは驚いたのか、呆然としている。

私ははっとした。

「ご、ごめんなさい。うるさくしちゃって。」

佐竹くんはそんな私をみていった。

「いや、全然嬉しい。読んでみるわ。」


「おっ、お役に立てて光栄です。」

動揺して、変な言葉遣いになってしまった。

だって、あんな言葉聞いたことなかったから。


……あんな優しい声で、話すところなんて、知らなかった。

熱くなった顔を冷まして佐竹くんの方を見た。


あれ。

佐竹くんはいつも姿勢が良くて、背筋が伸びて、本を読む姿勢がとてもいい。

けど今は何故か不自然に顔をうつむけてメモを見ている。

なんでだろ。