推しにおされて、すすむ恋



「の、ノア……?」


リムチ―からゆのの手をさらい、蛇口に近づける。


「洗うよ。少ししみるけど、大丈夫?」
「だ、だだだ、大丈夫!」


ゆのの後ろに回り、ゆのの手を水道水にあてる。

その時、一つにくくられている髪の毛に気付いた。これで髪の長さを誤魔化そうとしてるのかな?


「……ふふ」
「ノア?どうしたの?」
「ううん、何も」


髪の毛を括っただけじゃ、いずれ皆にバレちゃうよ。
さりげないフォローを入れておく。


「そういえば、髪を切ったんだね」
「え、あ!そ、そう、切った!
子供っぽく見えるから、切りたくなかったんだけどなぁ」


怪しまれないように、慎重に言葉を紡いでいるのが分かる。

ゆのは仮ステラが務まるか不安がっていたけど、俺の目から見るに、すごく頑張ってると思う。

俺の前の席の子は、お姉さん想いのいい子なんだって。最近になって、ようやく知った。


「子供っぽい?短いのも、よく似合ってるよ」
「ふぇ⁉」


ピョンと、肩が跳ねるゆの。

ヤタカがリムチーに「恋愛小説の真似は二度としないこと」とモノマネの極意について教える――その隙を狙って、「ゆの」と。耳元で、名前をささやく。