シリアル・ホラー

「お前、昨日先生と居残りでいっしょだったんだろ? なにか異常はなかったのか?」
「んん~……」

 ゆうじは少し考え込んで、首を横に振った。

「特に異常はなかったと思うぞ。普通に居残り学習して、終わってさよならしたし」
「そっか」

 僕は内心ほっとした。もしかしたらゆうじが殺したんじゃないかって思ってたから。
 その後ゲームやアニメのどうでもいい話をしながら歩き、ゆうじの家との分かれ道に来た。

「じゃあまた明日な」
「ああ」

 学校も明日には、少しは落ち着いているだろう。こういう時こそ、どうでもいい日常のありがたさがわかるな。

「そう思って歩き出した時だ」
「おい、お前!」

 背後で怒鳴り声が聞こえて、僕はびくっとして振り返った。見ると分かれ道の先で、ゆうじが中年のサラリーマンに胸ぐらを掴まれていた。

「ぶつかっといて何も言わねって、どういう教育されてんだ!」

 どうやらゆうじがあのサラリーマンにぶつかったらしい。僕はゆうじの助けに行こうと一歩踏み出した。
 すると――

「う……」

 サラリーマンの動きが止まった。
 サラリーマンとゆうじの間の空間。
 お腹とお腹の間に、ゆうじの腕が見えた。ゆうじは包丁を握っていて、それが根元までサラリーマンのお腹に突き刺さっていた。