シリアル・ホラー

「えぇ~?」

 丸夫くんは眠そうな目でスマホの画面を見つめた。

「ちぃ~がぁうよぉ~」

 丸夫くんは太い指を広げた手のひらを、顔の前で振って見せた。その手のひらは、動画の中の手と同じだ。

「そんなわけないじゃん! 一昨日、野村くんたちと廃工場行ったんでしょ? その時、やったんじゃないの!?」
「やあって、ないよぉ~」
「おい、どうした?」

 その時、黒沢先生がやってきた。騒ぎを聞きつけたらしい。

「先生、これ」

 まりちゃんが動画を黒沢先生に見せようとすると、先生は厳しい顔をしてまりちゃんを見た。

「吉野、学校にスマホを持って来ちゃダメだろ」
「だって」
「いいから、それをよこしなさい」

 黒沢先生はまりちゃんのスマホを取り上げてポケットに入れた。丸夫くんは目に涙をためたまま、その様子をぼうっと見ていた。



  ◆  ◆  ◆



「まりちゃん、大丈夫かなぁ」

 結局その後、まりちゃんは丸夫くんを責めることなく放課後になった。まりちゃんは黒沢先生に怒られたらしく、しょんぼりして帰っていった。一応、スマホは返してもらったらしい。でも噂は学校中に広がって、丸夫くんが野村くんたちを殺したって噂になっていた。おそらく今頃は、みんな動画を拡散してるんだろう。
 まりちゃんによれば、動画の送り主はわからないみたいだった。知らないアカウントで、初めて見たという。DMはグループルーム仲間でしかやりとりはできない。見ず知らずの人がまりちゃんの動画を送ることなんて、できるはずないのに。
 その時、階下でお母さんの呼ぶ声がした。

「美里~、電話よ」