シリアル・ホラー

「なるほど」

 信楽刑事の顔が、一瞬“ブレた”ような気がした。

「え?」
「なるほど」

 信楽刑事は先ほどとまったく同じ表情と口調で、同じセリフを言った。

「それで南先生は身体中を鋭利な刃物状の凶器で刺されていたのですが、それはあなたの妄想通りですか?」
「え?」

 心臓が大きく跳ねた。
 え? 今なんて言った?

「あなたが妄想の中で南先生を殺した通りの状態でしたか?」
「あ、あの、なにを言っているのかわかりません」
「では、聞き方を変えましょう。あなたの妄想が現実になっているのですが、それについてはどう思いますか?」
「あ、あの……」

 信楽刑事の目はまるで空洞のようで、白目がなく真っ黒だ。口の中もヤニで黄色い歯が不規則に並んでいるだけで、奥は暗い空洞だ。鼻を突く刺激臭でボクは顔を顰め、腕で顔を覆う。

「それについて、あなたはどう責任を取るおつもりですか? これからまだ人を殺すつもりですか?」
「や、やめてください!」
「あなたはどれだけ人を殺せば気が済むのですか人殺しについてどうおもいますかひとごろししねひとごろしもうそうでひとをころすしねひとごろし」
「わあああっ!」

 ボクは思わず叫んで立ち上がった。

「どうしたの!?」

 母親が駆け寄ってくる。女性警察官も不安そうに横から覗き込んでいた。

「どうしました?」

 前では信楽刑事がびっくりしたような顔でボクを見ていた。その顔は先ほどのようなおかしな様子はなく、普通の顔だった。