シリアル・ホラー

「け、警察! い、いや、救急車!」

 ボクはとりあえず電話に飛びつき、119を押した。



 母親が帰宅した時、自宅は警察やら野次馬やらで騒然としていた。始めは家の者だと信じてもらえずなかなか中に入れなかったようだが、ようやく中に入った時にはボクが呆然とソファに座って女性警察官に介抱されていたという。
 ボクには通報した後の記憶が、すっぽりと抜け落ちていた。母親に話しかけられた時、ようやく周囲の様子がわかったくらいだ。

「どうして先生が家にいたの?」
「え?」

 母親がなにを言っているのかわからない。

「せ、先生?」
「あんたの学校の先生でしょ? 南先生って」
「み、南……」

 南は確かに、ボクの学校の英語教師だ。そうだ、確かにあの顔は南だ。髪に隠れてよくわからなかったし、まさか自分の学校の先生が家で死んでるなんて想像もできないからわからなかった。

「な、なんで……」
「そんなのわたしが知りたいわよ。なんで先生が家にいたのよ。家庭訪問かなにか?」
「お母さん」

 母親の背後から、厳つい顔をした男の人が顔を出した。

「少しタクヤくんから話を聞かせていただいてもいいですか?」
「え、ええ」

 母親はそういうと、戸惑いながらソファを立った。その男の人はボクの向かい側に座ると、胸元から黒い身分証を出した。

「○▲県警の信楽です。死体を発見した時の状況を、もう一度教えていただけますか?」

 身分証には「巡査部長 信楽直弘」と書いてある。「部長」というんだから、きっと偉い人なんだろうな。信楽という刑事は、鋭い目つきでボクを覗き込んできた。