クールな王太子は一途に愛を待ち続ける~夢灯りに咲く紫苑~

 朝早いので大通りは誰も歩いておらず、人目を避ける心配はなかった。
 これ幸いとばかりに、荷物を抱えて足早に街をあとにする。

 千葉へと続く街道をただひたすら歩く。
 太陽が真上に昇るころには三人とも疲労困憊になり、ついに両親は道端で座り込んでしまった。

「少し休憩しましょ。向こうに沢があったから水を汲んできます。待っていて」

 疲れている両親をその場に残し、桜和は清らかな水が流れる沢のほうへ向かった。
 もぬけの殻になっている菊地家のうわさが、そろそろ煌太郎の耳にも入ったころだろうか。
 沢の水を汲みながらも、自然と頭に思い描くのは煌太郎の綺麗な笑顔。
 このまま一生会えないなんて嫌だ、いつか必ず会いにいくと、このとき桜和は強く思った。
 そっと胸元に手を当てる。大丈夫、さみしくなったらこの写真と押し花を見よう。

 水を入れた水筒を持ち、両親が待つ場所まで戻ろうとして街道を横切ったときだった。
 疾風のごとく勢いよく駆けてくる二頭の馬が桜和の視界に入った。どうやらどこかの貴族の馬車らしい。
 急いでいるにしても飛ばし過ぎだなと心配した矢先、一頭の馬が暴れ出して桜和のいるほうへ突っ込んできてしまう。

「助けてー!」

 そう叫んだけれど、桜和はそのまま馬車と衝突して命を落としてしまった。