クールな王太子は一途に愛を待ち続ける~夢灯りに咲く紫苑~

「みんな、荷物をまとめてくれ。夜が明けるころにはここを発つ。すまないがそのあと誰かに我々のことを聞かれたら、知らないと言ってほしい」

 使用人たちが嗚咽を上げて泣き始めた。この先自分がどうなるのか不安なのだ。

「お嬢様」

 それぞれが肩を落として部屋に戻っていく中、千代が桜和のもとへやってきた。
 こらえきれずに大粒の涙をぽろぽろと流している。

「千代……」
「お世話になりました。こんなに突然のお別れになるなんて……」

 桜和は思わず両手で彼女の手をぎゅっと握った。

「別れるなんて嫌よ」
「お嬢様、気をしっかり持ってください。今はつらくても、風向きが変わる日は来るかもしれません」

 千代は泣きながらも桜和の目をしっかりと見てそう言った。
 自分より三歳も年下で、まだまだ子どもだと思っていたのに……。
 千代のほうがよほど理解力があり、順応性が高いと桜和は感心してしまう。

「煌太郎様ともまた会えますよ。お嬢様と運命で結ばれているお方ですから。希望を持ってください」

 そう言って涙を拭う千代も、実家に帰っても居場所などなく、すぐに違うお屋敷へ使用人として出されるはずだ。

「千代、今までありがとう。あなたのことは忘れない」

 心を込めて感謝を伝えると、千代はついにしゃくりあげて泣いてしまった。