クールな王太子は一途に愛を待ち続ける~夢灯りに咲く紫苑~

「あら、桜和さん」

 後ろから声をかけられて振り向いた先に、煌太郎の母が憮然とした顔をして立っていたので、桜和はあわてて頭を下げた。

「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「あなたのドレス、ずいぶん地味ね。まぁいいんだけど……」

 桜和は母や千代と相談しながら、どのドレスを着ていくかに関しては相当悩んだ。
 あまり派手に着飾って誰よりも目立ってしまったら、煌太郎の母は気に入らないだろう。
 かといって、あまりにも地味なドレスを選んだら、貧乏くさいと言われるのは目に見えている。
 結局迷った末、薄い紫色のドレスにしたのだけれど、やはり嫌味からは逃れられなかった。
 だが桜和にとってはこれも想定内。愛想笑いをしながら「すみません」と謝っておけばいいだけのことだ。

「桜和は気を使ったんだよ。奥ゆかしいんだ。本気で着飾ったら桜和が世界で一番美しいに決まってる」
「煌太郎様……」

 桜和の後ろに煌太郎が現れ、包み込むようにそっと肩を抱き寄せると、彼女の頬はあっという間に桜色に染まった。
 額を隠すサラサラの黒髪、凛々しい眉、やさしさを含んだ黒い瞳。
 タキシードを身に纏った煌太郎は背が高く、手足が長い。
 こんなに完璧な男性は、どこを探してもほかにはいないと、桜和はあらためて惚れ直した。