クールな王太子は一途に愛を待ち続ける~夢灯りに咲く紫苑~

 千代がウキウキと声を弾ませると、桜和は頬を染めながら恥ずかしそうに微笑んだ。
 今の桜和にとっては煌太郎がすべて。身も心も捧げたい相手だ。
 彼のもとへ嫁げることはこの上ない幸せで、どんな苦難もふたりなら乗り越えていけると信じていた。

「では、全身を綺麗に整えましょう。昨夜のうちに髪は洗いましたから、ていねいに椿油を施して結いましょうね」
「うん、お願いね」
「今日はみなさん洋装らしいので、お嬢様もドレスですよ」

 千代の言葉に、桜和はにこりと満面の笑みを浮かべてうなずいた。

 母の言いつけを守り、全身の身なりを整えた桜和は両親と共に馬車で野宮邸へ向かった。
 伯爵家である菊地の家もほかと比べると大きいけれど、野宮邸はさらに敷地が広い。
 何人もの使用人が出迎えのために玄関先で一列に並び、頭を下げている。
 さすがは公爵家だなと、桜和は訪れるたびに毎回圧倒されていた。

 社交界がおこなわれる広間へ案内されて足を踏み入れると、上流階級の貴族たちがすでに集まっていた。
 桜和と両親もその輪に混じり、お決まりのあいさつを交わしていく。
 今日は洋装でと事前に言われていたので、和服姿の者はひとりもおらず、まるで異国に来たみたいだと桜和は緊張が増した。