クールな王太子は一途に愛を待ち続ける~夢灯りに咲く紫苑~

「大丈夫だから。おいで。見せたいものがある」

 足を止めたレーナに、オスカーが手招きをして呼び寄せる。
 入口の門の前で警備をしていた衛兵ふたりがオスカーの姿に気づいた途端、きびきびとした動作で頭を下げた。

 フィンブル宮殿の中は秋のさわやかな風が吹き抜けていて、清掃も行き届き、とても綺麗な宮殿だとレーナは思った。
 小さな池のそばを通って奥へと進んでいく。すると今度は花畑のような光景がレーナの目に飛び込んできた。

「綺麗だろう?」
「はい。とても」

 ふたりの目の前には、薄紫色の花が一面に広がっている。
 レーナはふと、フィンブル宮殿には花が咲いているという噂を思い出した。

『王太子様が中庭に植えさせたんだそうだ。どこか東方の国で種を手に入れたとかで。珍しい紫色のアスターだってさ』
 たしかクリスもそんなふうに言っていたな、と。

「君は予知夢を見ることができる。でも、異国の夢に関しては違う。それは……前世の記憶だ」
「……前世?」
「これは誰も知らないことだが、俺には前世の記憶があるんだ」

 わざわざフィンブル宮殿にまで連れてきて、オスカーが意味不明な冗談を言ってからかったのだとは、レーナには思えなかった。
 とても真剣に、切ない瞳でレーナを射貫きながら伝えてきたからだ。