クールな王太子は一途に愛を待ち続ける~夢灯りに咲く紫苑~

 作業をしている建物の外から、ザッザッザッと土を踏む足音が近づいてきた。
 力強いので女性ではなく男性だ。しかもひとりではなく何人もいる。

「レーナ・アラルースアはいるか?」

 やってきたのはウエストコート姿の高貴な男性で、彼の後ろには従者の役人たちが控えていた。

「私……です」

 名前を呼ばれたレーナは驚きながら即座に立ち上がった。
 なぜ自分を捜しにきたのかと、不安な気持ちが押し寄せる。

「調理補助の仕事を手伝っていたな?」
「はい」
「取り調べるから一緒に来い」

 彼が後ろにいる役人たちに手で合図を送ると、大柄な男性がふたりレーナのもとに来て両側から腕をつかんだ。

「乱暴はお辞めください」

 レーナの同僚がひとり、か細い声で懇願するように言う。
 レーナ自身はなにが起こっているかわからず、ただされるがままだ。

「お前たちも今日の宴でなにがあったのか聞いているだろう。この者には毒殺未遂容疑がかかっているんだ」

 レーナはそこでやっと自分が犯人だと疑われているとわかり、大きくかぶりを振った。