クールな王太子は一途に愛を待ち続ける~夢灯りに咲く紫苑~

「殿下がワインに毒が入っていると仰ったとき、単に疑っておられるだけかと思っていましたが、まさか本当に盛られていたとは。しかし……」
「ん? どうした?」
「なぜわかったのですか? もしや犯人に心当たりがおありで?」

 声をひそめるルシアンに、オスカーはふるふると小さく首を横に振った。

「俺が毒を口にし、血を吐いて倒れると教えてくれた者がいたんだ」
「ではその者を問い詰めれば犯人がわかりますね」

 重要な手がかりだと言わんばかりにルシアンは低い声で言い、それはいったい誰なのかと問うような目でじっとオスカーを見つめた。
 しかしオスカーは静かに「待て」と告げて、落ち着くように促す。

「その者は犯人についてはなにも知らない。捜すなら別の方向からにしないと」

 ではなぜ、宴でワインに毒を盛られると知ったのか。
 もし、ほかの誰かに聞いたというなら元をたどっていけばいいだけだが、オスカーからの許可が出ない。
 ルシアンは腑に落ちなくて首をかしげた。

「俺はそんなに下の者たちから嫌われているか?」
「いいえ、滅相もありません。若い侍女などは身の程もわきまえず、王太子殿下のお姿に目を奪われているくらいですから」
「はは。そうか」
「笑っている場合ではございませんよ」

 小さく笑みをこぼすオスカーを見て、ルシアンは真顔で場の雰囲気を引き締めた。