『ふみ、一人で帰ってんの?』
初対面のおねえさんからかわいいかわいいと褒めちぎられて、ふわふわ状態のわたしを、灰慈くんが現実に連れ戻す。そうだ。お家に帰らなきゃだ。
『うん。あめちゃんのお家で遊んでたの』
ちゃんと5時までに帰ってくるんだよ、ってママに言われたのに、時間を忘れてたから、あわてて飛び出したんだった。思い出したら、すぐに帰らなくてはと思ってしまう。
出した右足。次に、左足?何故か一歩を踏み出せず、身体は後退する。
振り向いた。犯人は灰慈くんだ。
『ごめん、俺この子送るから、また明日でいい?』
俺、この子送るから。
その何気ない一言がわたしにとってのご褒美。帰宅という変哲のない日常が、まるで遊園地への道のりみたいに、きらきらと光る。
『いいよいいよ、私のことは気にしないで。またね〜ふみちゃん』
『ばいばい、おねえさん』
灰慈くんにランドセルを掴まれたまま、わたしはおねえさんに手を振って、灰慈くんと一緒に家まで帰りついた。



