メルティ・エモーション

「ねえふみ。ハグの練習、そろそろグレードアップしたら?」

「グレードアップ?」

意味がわからず首を傾げると、りるちゃんの目が歪んだ。

「ハグの次は、こっちでしょ〜!」


りるちゃんの指がくちびるをトンと叩くから、全身の血が逆流したように熱くなった。

『ふみ、なにしてんの?』

小学生のころ、高校生の灰慈くんとたまに帰り道が一緒の日があった。

『だれ?雪平の妹?』

『ちがう。幼なじみ』

『雪平の幼なじみ超可愛いね!?ふみちゃんっていうの?』

この頃になると、灰慈くんと一緒にいる人が必ずしも友達じゃないってことを知っていた。彼女連れの灰慈くんは見慣れたもので、その日の灰慈くんも、彼女らしきひとと一緒だった。

『久遠寺ふみです』

まだまだ人見知りなわたしは、灰慈くんの後ろに回り込んで、その人に挨拶をした。

『久遠寺……?』

『久遠寺先生の娘』

『ああ、納得。そりゃ可愛いし、なんとなく久遠寺先生に似てる〜!』

彼女さんが座り込んでわたしと目線を同じにさせる。長いまつ毛ときらきらのまぶた。可愛い彼女は制服姿。灰慈くんのズボンと同じ柄のスカートは、きっとずっと、永遠に羨ましい。

『ふみちゃん、おっきくなったら美少女になるよ!』

『ほんと?おねえさんみたいに可愛くなるかな』

『ねえ雪平聞いた?ふみちゃん、私のこと可愛いって言ってくれたよ!めっちゃいい子!』

『うん、ふみは良い子』

灰慈くんに褒められたので、わたしは調子が良くなる。