コンビニからの帰り道は少し遠回りをした。川沿いの遊歩道では、最近高校で流行っているダンスの振り付けを灰慈くんにレクチャーした。わたしが頑張って覚えた振り付けを、勘のいい灰慈くんはすぐに覚えたので感動がカンストした。さすが灰慈くんだ。その調子で動画を撮りたいと強請ったけれど、残念ながら撮らせて貰えなかった。
それから灰慈くんの家に戻ると、視聴途中だった映画の続きを最後まで見れば、エンドロールが流れる頃になると門限が迫っていた。
家を出る前に、いつもの練習をさせてもらった。
ドキドキしながら灰慈くんの身体にぎゅっとしがみつくのがわたしの限界。そんなわたしを見て、いつも、いつまでも灰慈くんは楽しそうにする。
五秒が限度。だけどきっと、あたしの五秒は誰よりも幸せな五秒だ。
離れようとすれば、灰慈くんはわたしの首元に鼻を擦り寄せるから、鼓動が弾んだ。
「やっぱこの匂い、いいな」
「この香り、灰慈くんは好き?」
「うん、好き」
「(顔が熱い……)」
わたし宛てに届けられた言葉じゃないって分かってるのに、ままならないわたしは、自分用だって勘違いしてしまう。
「どんどん俺好みになって、どうするつもりなの」
灰慈くんの言葉は、棘の先に蜜がある。
「(知ってるくせに……)」
こうありたい。理想の自分を思い描くのは簡単だ。けれど、理想を語るのは違う。とくにわたしは、灰慈くんに好きになってもらいたくて、灰慈くんの理想に近づきたくて毎日過ごしているわけだし、灰慈くんもまた、それを十分理解しているはずだ。



