メルティ・エモーション

と、ここまでは良かった。

アップルパイを食べ終わり、灰慈くんが淹れてくれたミルクティーをお供に映画を観ていた。同じソファーで、リラックスモードの灰慈くんと正座のわたし。灰慈くんが電話に立つのでほんのいっときの休息を得、わずか3分ほどで灰慈くんが戻ってくる。

『今から同僚が忘れ物届けてくれるって。俺、そこのコンビニまで行くけど何か買うものある?』

『わたしも行く!』

べつに特段おかしなことはなかったはずだ。けれども灰慈くんは少し悩ましげな表情を浮かべると、『まあいいか。うん。行こう』と、頷いてくれたので、コンビニへと向かった。



「ふみは選んでて」


灰慈くんは私にそう言い残して、自分はコンビニの外で待つようだった。灰慈くんが居ると普通のコンビニがリゾート地のコンビニへレベルアップすると思う。これは完全にわたしの贔屓目で、わたしの地元はリゾート地ではなく、このコンビニもまた、なんの変哲のないそれだ。

偶然居合わせた女性客も灰慈くんをちらちらと見て「あの人かっこよくない?」「芸能人かな?」「横顔美しすぎるんだけど」と囁いているので謎に誇らしげになった。