きっとわたしは、雪平灰慈という人に、とことん弱く生まれてきたのだと思う。
綺麗な琥珀色がわたしから道路へ向かう。どうやら話は終わったらしい。
ガッカリされたらどうしよう。寝落ちしたから、明日から電話無し!っていうのは……出来れば避けたい。
昨日の自分を最大に恨んで、もう二度と寝落ちしないことを神様に誓う。
「ふみ、今度の土曜ひま?」
灰慈くんに予定を聞かれる。幸せだ。
「ポコの散歩当番以外、予定なし、です」
罪人は敬語をつかう傾向にある。
「じゃあ10時に迎えに来るから、買い物付き合って」
「え……」
「なんでも言うこと聞くんでしょ?」
「聞きます!」
灰慈くんは横顔で笑う。生まれ持った美貌を灰慈くんはよく理解していると思う。だって、口の端を数ミリ上げるだけで完璧な笑顔が完成されるのだ。
やってきたバスに乗り込み、一番うしろの席に二人並んで座った。ここがわたしたちの特等席。
シワひとつないスーツ姿の灰慈くんは、ビジネスバッグをわたしの反対側に置く。



