メルティ・エモーション

「これはわたしの片想いの問題だから、灰慈くんが別の誰かと恋愛をしてもそれは仕方ないことだよ。選ぶ権利はわたしじゃなくて、灰慈くんにあるもん。……それと、わたしのことはいくらでも悪く言っていいけれど、灰慈くんのこと悪く言わないで。お願い」

青葉くんの意図なんて、わたしは知らない。けれど好きな人のことはどんなことであろうと、悪いことは聞きたくない。言葉が届いたのか、青葉くんの表情がふっと軽くなる。

「あそ。でも俺は久遠寺のことは知ってても、灰慈クンのことは知らないから、知ってる人の方の味方に付きたいかも」

「(ああ、そうか)」

青葉くんの纏う空気が硬いのは、いつもの彼らしくない理由は、友達としてわたしのことを心配してくれたんだ。

「ありがとう。青葉くん優しいね」

「別に。そういえば久遠寺、球技大会何出るの」

「ドッジ。逃げるの得意だもんね!」

「確かに視界から居なくなりそうだよね」

「ねえ、それってあたしのことチビって言ってない?言ってるよね?」

「ソンナコトナイデスヨ」

「そんなことありますよ」

「さあね。どうでもいいけど、あと二分で授業始まるよ」

「え!?……え!?」

「俺優しー」

青葉くんの優しさを見間違えたわたしは慌てて教室に戻った。