「なんでって、だって、灰慈くんのこと好きだもん。すごく好きな人がいるのに、他の誰かと付き合うなんて有り得ないよ」
それがわたしの普通で、平和だ。
「久遠寺的にはそうかもだけど、じゃあ、灰慈クンは3000日、ずっと彼女いないの?」
わたしの平和に暗雲。
「……昔は居た時もあって、今は……知らない」
灰慈くんのことになると饒舌になるのがわたしの長所で、特技で、誇りなのに、大好きな人のことなのに、何故かどうして、しり込みしてしまう。
「ほら。久遠寺の気持ちを知って彼女作ってたんでしょ、灰慈クンは。この先、灰慈クンがずーっと気持ちに応えてくれなくて、久遠寺は彼氏がいないまま大人になって、向こうは別の人と結婚でもしたらどうすんの?」
青葉くんが言う未来が、ものすごくリアルに想像出来る。
でも、そんなのやだ。想像だけで気が滅入ってしまう。
泣きたくなるし、食欲も減退する。
「つか、期待持たせるほうも残酷だと思うよ」
ぎゅっとスカートを掴んで、膨らんでいた涙を零さないように瞬きもせず、「……青葉くん」と、背の高い彼を見上げる。



