メルティ・エモーション


「彼氏って、だれの?」

「え?久遠寺って彼氏いるよね」

「いないよ〜。別の久遠寺さんと勘違いしてるんじゃないの?」

「久遠寺って知り合い、久遠寺ふみしかいないし、有村とよく話してるでしょ」

りるちゃんとの会話は概ねわたしの推し・灰慈くんについてだ。青葉くんがいう彼氏が灰慈くんに結びつくと、心臓が大きく跳ねた。

「は、灰慈くんは彼氏じゃないよ!」

「そうなの?」

「そうだよ!」

「まじかー……俺、完全に彼氏と思ってた」

「そんなわけ……!毎回プロポーズ失敗してるんだよ、振られ続けて約3000日だよ」

「まじかよ。どんまい」

疑いの晴れた青葉くんは、明快に笑った。

「でも、その間彼氏は居たでしょ」

しかし、青葉くんはまたもや勘違いをしているようなので、「え?いないよ?」と、当然潔白を言い渡すと、一度崩れたはずの表情がふたたび険しくなった。

「……は?なんで?」

その疑問さえわたしにとっては疑問だ。