メルティ・エモーション

落下していく感覚に心地良ささえ覚えていると、腰に回された何かが衝撃を吸収するので、降下は強引に遮断される。

「久遠寺の身体、うっす」

「……!?」

「あ、ごめん。大丈夫だった?」

青葉くんがわたしを受け止めてくれたのだ。

「ありがとう青葉くん」

受け止めた反動で落ちてしまった青葉くんのノートを拾い上げて「ごめんね」と謝ると、受け取った青葉くんは二重の目を一等細くした。

「いーよ。久遠寺が怪我しなくて良かった」

優しさが痛い。わたしの鈍さのせいで、申し訳ない。サッカー部の青葉くんは、わたしよりもずっと条件反射が優れているのだろう。

「怪我しても自業自得な」

天くんが呆れる。流くんは、なにやってんのおまえ、の目でわたしを見遣ると、青葉くんを置いてさっさと階段を登っていく。

灰慈くんと繋がりのある二人だ。わたしの鈍臭い情報を流出されてしまうおそれがあるので、後で甘いもので買収しようと思う。