メルティ・エモーション



目の前の灰慈くんは輝きに満ちていて、見つめると胸がきゅっと優しく締め付けられた。

『……灰慈くん。どうしよう、灰慈くん』

『ん?』

『ふみ、灰慈くんのこと好きになっちゃったかも』

パパが毎日ママに贈り、ママがその度にパパへお返しする気持ち。好きと好き、その真ん中にある幸せ。その人じゃないと現れない感情。特別な感情。

これは───恋だ。



『何ソレ。俺、今まで嫌われてたの?』

『そうじゃなくて。今まで好きだったのが、大好きに変わったの』

『そ。ありがとう』

『ふみが大きくなったら、ふみと結婚してくれる?』

『わかんない。するかな?』

『する!ふみ、勉強がんばる!』

『じゃあ、ふみが大きくなっても俺の事好きなままだったら、結婚するかも』

『ほんと?約束だよ?』

『はは、うん、約束』

指切りをした。アンバランスな小指で、不格好な指切りだった。それが終わると『かわいいかわいい』そう微笑んだ灰慈くんはわたしの頭をよしよしと撫でた。


『今から何しよっか』

『お兄ちゃんに、クッキー焼いてあげたいな』

『クッキーだったら作れるかも。作ろっか』

『うん!』

あの日灰慈くんは、魔法使いのわたしに魔法をかけた。冷めることのない恋の魔法だ。