メルティ・エモーション

『それよりふみ、これって学校の宿題?』

広げていたノートが発見される。魔法使いになっても、残念ながらノートを隠す魔法は使えなかったので致し方ない。

『ううん、塾の宿題』

『えらすぎる……でも、なんで勉強ばっかしてんの?』

『ふみは走るのは出来るけど、バスケも上手じゃないし、歌もへたっぴだし、長縄も跳び箱も出来ないの』

『跳び箱、怖いの?』

『うん。跳べなくなるの。ふみはお兄ちゃんたちみたいに上手に出来ることが少ないの。でもね!お勉強だったら上手だって先生に褒められたから、お勉強はするの』

出来ることは少ないけれど、その少ない中でできる方を伸ばす方が良いもん。

それにわたしが応援に行っても、たまに人見知りを発揮させちゃって、パパたちを困らせることがあるから……行かない方が良いもん。

『ふみには夢があるもんな』

頬杖をつく灰慈くんに向かって、 『うん!』と頷いた。決して特別では無いことだ。

『俺からすると、ふみに夢があることも、それを実現しようとしているのも、すごいことだと思うよ』

しかし、灰慈くんはそれを特別だと言う。

『どうしてすごいの?』

お兄ちゃんも夢があるし、あめちゃんやりゅうくんも夢がある。至って普通で、変哲もなく、平凡な望み。そこに疑問を感じたことはなかったし、これからも不思議に思うことはないだろう。