まるでぬいぐるみだ。けれども、灰慈くんがかかえてくれるなら、ぬいぐるみでも構わない。
片手でわたしを抱き抱えた灰慈くんは、慣れたようにリビングの扉を開ける。ソファに下ろされると、『ありがとうございました』と丁寧におじきをして、アイスクリームを冷蔵庫に預けに行った。
いつものリビングが、灰慈くんという天使さまが居るおかげで楽園になる。
しかし天使さまは紅茶とコーヒー、どちらが好みかわからず、わたしが好きなココアを用意した。粉とミルクだけで幸せが完成しちゃうココアは魔法の飲み物だと思う。
魔法使いになった気分でココアを出した。灰慈くんは『ありがとう』と笑って、わたしの頭をなでなでとしてくれた。正解だと誇らしげになる。
『ふみ、また勉強してたの?』
『うん。外国語のふくしゅう、していたの』
『偉いなあ。いつも怒られてる俺とは大違い』
『灰慈くん、なんでパパに叱られちゃったの?』
『遊びすぎだから、ちゃんと勉強しなさいって』
『じゃあ、ふみと遊んだら、またパパに叱られない?』
不安になってみせると、『そうだな』と、灰慈くんは表情をくしゃっとさせて笑った。
わたしは不安なのに、灰慈くんは楽しそうだ。



