メルティ・エモーション


『アイスだ!うれしい!はいじくん、わいろ、ありがとう!』

『どうも。つか今日の久遠寺家、静かだね。ふみ一人?』

『そ。今日は千景の試合』

そう説明して、パパはわしゃわしゃと髪の毛を掻き分けた。

『でも、ふみは行かないってな』

パパがわたしの頭を優しく撫でる。ママが作ってくれた三つ編みを壊さないようにだ。

あ!そうだった。

" ふみも行く! "って言わなきゃ。パパを困らせるのはあまり良くない。絶対良くない。

スカートをぎゅっと握りしめていると、わたしの目の前で灰慈くんが屈むから、目線がおなじになる。

『じゃあ、ふみは俺と留守番してようか』

──はいじくんと、おるすばん?

『する!』『はあ?』

わたしとパパの声が見事に重なった。さすが親子だなって、自慢げになる。

『先生、こんなことしてる場合じゃないよね。時間大丈夫?ひなちゃん、千暖みながらビデオ撮って、大変なんじゃないのー?』

『……灰慈、任せていいの』

『いっすよ。 ふみ、いってらっしゃいしよ』

『パパ、行ってらっしゃい』

なんだかまだ言いたいことがあるようなパパを、灰慈くんと二人で送り出す。