灰慈くんを好きになった日のことは、今でもはっきりと思い出せる。
◝✩
『ふみ、千景の応援ちょっとだけでも行こ。な?』
『やだ。今日はふみお勉強の日だから、お留守番ー』
『えー……パパとドライブ行こう?ドライブスルーでポテト食べようや』
『ふみ、モデルさんになりたいからポテト食べないんだあ』
『うあー……美意識。超女子じゃん』
パパがえらいえらいとわたしの頭を撫でるので、誇らしい気持ちになった。あのお休みの日は、一番上のお兄ちゃんが出場する、バスケットの試合に応援に行く日だった。
前日までは行く気だった。でも、ごく稀に、さらに言えばとても気まぐれに現れるワガママなわたしが直前に顔を出し、パパを困らせていた。
『どうするかなー……』と、悩ましげなパパと、おへそを曲げているわたし。その攻防が繰り広げられるリビングに、突然呼び鈴が鳴った。
『宅配かな。ふみ、ちょっと待ってな』
『はーい!』
パパが居なくなると、緊張を虚脱させた。



