ふと頭に何かを感じた。それが灰慈くんの手のひらだって、きづくのは早かった。
「待つのはふみの好きな場所でいいけど、今度はあの辺で待てるといいな」
灰慈くんのやさしい琥珀色がわたしを安心させる。灰慈くんはわたしの葛藤を否定せずに認めてくれる人で、彼のそんなところがわたしは大好きだったりする。
「今度?」
だからわたしは甘える。例えば同じクラスのみんなが間違いだと言っても、灰慈くんだけは正解に変えてくれるから、もうずっと、そのやさしさに飛び込んでしまう。
「今度。いつにしようか」
「えっと……近いうちに」
「じゃあ、明日」
「明日だと、ご褒美続きで、熱が出そう」
真っ赤になって返事をすれば、それが余程おかしかったのか「なにそれ」と、彼の肩が揺れる。好きだ。静かな微笑みも、やわらかな口調も、どれもこれもが好きだ。
灰慈くんは立ち上がると、片方の手でネクタイを緩めながら、もう片方の手をわたしに差し出す。
「ふみ、練習する?」
優しい優しい灰慈くんは、ときどき物凄く意地悪だ。



