メルティ・エモーション

りるちゃんと言えば、報告しなければならないことがある。靴箱に手をかける彼女に向かって「そういえば」と、声をかける。

「りるちゃんに言われて普通の恋愛ってのを目指したけど、灰慈くんのお気に召さなかったようなので、普通の恋愛は諦めました」

「ああ、やっぱり?」

「やっぱりって?」

遅れてあたしもロッカーをパタンと閉める。

「私は、いつものふみでいてほしい灰慈くんの気持ち、なんとなくわかる」

「え!?りるちゃん、天才なの!?」

「全部じゃないよ。なんとなくね」

すごい。やっぱり天才だと思う。だって、わたしは幼なじみなのに全く分からないのに、どうすれば灰慈くんの気持ちが分かるのだろう。

「例えば?」

階段の一段上から覗き込むように訊ねると、りるちゃんはふふんと鼻を鳴らした。

「おふみ、恋愛ゲームのご法度、教えてあげようか?」

「うんうん」

「初見で攻略サイトに頼ってはいけない。まず自分で試してみて、上手くいかなかったらサイトを頼る」

「灰慈くんは恋愛ゲームじゃないよ!?」

「例えよ例え!」

りるちゃんが息巻く。もしも、恋愛ゲームの登場人物に灰慈くんがいれば、クリアするまで徹底的にやり込むだろうし、灰慈くん専用アイテムがあれば揃えるまでやり込み、廃課金者と化し、ママとパパに叱られていたに違いない。

「でも私、おふみ推しだから。おふみの恋愛はちょう応援してるよ」

りるちゃんはブイサインを作った。