お兄ちゃんもそう。幼稚園のお友達もそう。わたしだって笑う時は表情の全部を使って、大きく笑う。でも、灰慈くんは違う。目尻を優しく下げて、なんだか余力のある笑顔を浮かべる人だって思った。
天使だから?
ううん、ちがう。
──「(天使じゃなくて、王子さまだ!)」
背中の羽も無かったし、頭に王冠は被っていない。
だけど、間違いなくわたしの中で、雪平灰慈という人が特別な人に変化した瞬間だった。
あの日、確かに宝物を見つけた。
『向こうにふみの友達がいるから。怖くなったら俺のところにいつでも来ていいから、遊んでおいでよ』
『や!ふみ、はいじくんと一緒がいい』
『俺?』
『みて、さっき拾ったキラキラの石、はいじくんにあげる』
『あはは、ありがとう』
灰慈くんが笑うと、まるでプレゼントをもらった時みたいに胸の真ん中がドキドキして、くすぐったくなった。
わたしの宝物、それはこの先長い付き合いとなる、恋の欠片だった。



