メルティ・エモーション


《ふみちゃんがあかちゃんのころ、あったことあるよ》

次はあたしに関する文字だった。

《あかちゃんのころ?》

《うん。だっこした》

……だっこ?

『ふみのこと抱っこできたの?ふみ、こおんなにおっきいのに?』

灰慈くんを見上げた。見上げた先の灰慈くんは、甘やかな笑みを浮かべていた。

『出来るよ』

そう言ってあっという間に持ち上げられ、驚いたわたしは、わっ!と灰慈くんにしがみついた。


『捕まえた』


初めて家族以外の人に抱っこ……所謂、お姫様抱っこをされた。

でも、嫌な気分はしなくて。そればかりか、心臓の内側で花火が打ち上げられているかのように、どんどんと音が鳴る方が強かった。

『ふみちゃんは、今日、楽しくなかった?』

灰慈くんの声。その優しい音を聞くと、不思議と心臓の音が小さくなる。

『……うん。楽しくなかった』

『そっか。でも、俺は今日ふみと会えて楽しくなったよ』

『ふみのおかげなの?』

『うん。ふみちゃんのおかげ。実は俺もつまんなかったから、ありがとう』

わたしを抱っこした灰慈くんは優しく目を細めた。