メルティ・エモーション


『ふみ、おおきくなったら、ぱぱとけっこんする!』

幼いわたしはやっぱりプロポーズが趣味だった。

『ふみ、ずーっとそのままでいてくれよな』

その分パパが嬉しそうにするから、わたしのプロポーズ癖にも拍車がかかったと思う。

大好きな家族と一緒であれば常に無敵スター状態。

ポップなメロディと虹色のボディは、ちょっとやそっとの事じゃあ傷ひとつつかないの。

しかし、ひとたび外に出ると、しゅんっと縮こまり人見知りモードが入る。

パパに抱っこをせがんで、知らない人の前では顔を隠して、やだやだって泣いて、みんなを困らせていた。

外の世界は、まるで吸血鬼にとっての日光。羊にとって狼の住処、蛇だらけの井戸に放り投げられた蛙。

わたしの世界はおうちだけで十分。怖いところには行かなくていい。知らなくていい。

冒険なんかしたくなかった。しなくて良かった。

だけど、パパとママにはわたしの知らない世界を持っていた。

『ふみ。今度、パパとママたち、いつものホームパーティに行くんだ。ふみも行こう?』

お人形のドレスを着せ替えながら『ふみはおるすばんする〜!』と、クマのぬいぐるみを抱きしめていつもの返事をした。いつもと違って、ママは引き下がらなかった。

『それがね、いま、じーじたち旅行中なの。ふみは一人でお留守番出来るかもしれないけど、ママが不安だから一緒に着いてきてくれるとすっごく助かるな』

どうやらママは、ふみと一緒じゃないと元気が無くなるみたい。