メルティ・エモーション

襟元に留まる、曲がったネクタイに触れた。

自信満々だったくせに、必死に結んでいた指先は震えていた。

一体、俺に、何ができるというのか。

──いいなあ、と。

いつか、ふみは登下校中の男女を見て告げた。その二人の枠組みが本当のところどうであれ、ふみにとっては" 恋人 "に見えたらしい。

好きな人と一緒に登校出来たら、毎朝幸せだろうな、と。小さな口は大きな憧れをこぼした。

同年代であれば息をするように簡単なことも、理由をこじつけないと叶えてやることは出来ない。半分以下も叶えてやれない。

自分がいちばん面倒。

やめない理由をしらないこどもは、俺の方かもしれない。

応えてあげられないことの方が多い。

だからせめて、半分以下を取りこぼさないように。