メルティ・エモーション



いつもの時間に出社し、喫煙所に向かった。運良く、いやどちらかと言えば運悪く同期たちがいるので「はよー……」と間延びした挨拶をいれてタバコを取り出す。

「雪、なんか機嫌いい?」

出雲という男が俺を観察するので、ふつう、と答えた。いや良い方、と出雲は勝手に答えを捻じ曲げて頷く。今度は、柊という女がタバコを咥えたまま、俺の首元を指さした。

「雪平、ネクタイ曲がってるわよ」

「ん、」

理解していることを示した。そして整えない態度でいれば、同期三人は不可解を顔にのせる。なんだこの罰は、と、居心地の悪さを感じつつ、先程感じた苛立ちを消すようにニコチンを体内に取り入れた。

「え、そのままのつもり?」

「あー、まあ、」

答えを濁せば、喫煙に縁のない芹澤が「私、結び直そうか?」と勝手に心配する。

「……触んな」

伸びてきた手を払うと、芹澤は一瞬驚いて、すぐに恍惚を浮かべる。

「ちょっと、いまのすごい萌えた」

「おまえは簡単に男にときめきすぎ」

本命いるくせにな、は、面倒なので言わないでおく。

「どしたの雪。機嫌悪いのか良いのかわかんねえな」

「成程、女の子に結んでもらったのね?」

出雲と柊がにやにやと気色の悪い顔をしているので、それがやたらと癇に障る。せっかく、気が晴れたというのに、これではプラマイマイナスである。

「いま、教え込んでいる途中」

「……は?」