メルティ・エモーション

「……ん?男?」

「あ、女の子もいるよ?有村さん!でもね、天くんとか流くんと一緒にいるからか、男の子と仲良くなる方が早いんだよなあ。流くんと同じサッカー部の、青葉くんだっけ」

まるで日常を辿るようにふみは言葉を紡ぐ。俺のみぞおちの付近に不可思議な感情が流れたのも知らず。

馴染みの無い感情を持て余す趣味は無い。

とはいえ、ふみの口から男の名が出るのは初めてではない。

ただ、今と昔では明らかなちがいがあるわけで。

最近、ふみはやたらとめかしこんでいて、それが無性に腹立たしい。髪も巻いたり、ちょっと化粧したり。

先程言ったように、男にバレるでしょうが、と変に気をもんでしまう自分がいる。

「(……らしくないことは、考えるの、やめよ)」

これも一種の予防線。ふみは俺のことを大人だと思っているけれど、本性を隠せるのが大人だ。

実際は全然違うんですよってことをしっかりと聞かせてやりたいし、教えこみたいのが本音である。

「できた!……あ、あれ?なんで曲がるの?」

そんなものは1ミリも知らないであろう女の子は、俺の5倍は時間をかけ、俺の10倍は丁寧に首輪を結んだ。


「ヘッタクソ」

「うう、出直しま、」

「……なんで外そうとするわけ」

「え?だって、曲がってるよ?もう一回やり直す」

「ねえ、もうすぐ学校に着くのご存知?」