メルティ・エモーション

𓂃


……最悪だ。遅刻じゃん。

満身創痍でだらりと額に腕を乗せた、気持ちの良いはずの朝。

目覚めてすぐに落ち込むことなんかしばらくぶりだ。だけどせめて今日くらいは落ち込んでも良いだろう。

厳密に言うと遅刻ではない。出勤までにはかなり時間の猶予はある。

しかしこのままでは、いつものバス(、、、、、)に間に合わないのは明白だ。

……たまには合わせなくていっか。そういう日もあるよな、うん。

予防線、張っていて良かったわー、と。いつかの自分を褒めてやる。実は、張りすぎて困ることも多い。

ふみが高校に入学してからというもの、普段つかっていたバスより少しだけ早いもので出勤している。ほんの少しだけ。

しかし遠回りのバスをつかっているので、出勤時間はそれほど変わらない。イコール、この数ヶ月で俺の毎朝が変わったことなど、誰も気付かない。

ということで、今日は諦めて、昔使ってたバスで……なんなら車で行けばいいや。

計画的犯行は、本日、有給を使わせてもらう。

ふあ、と欠伸を噛んで、上体を起こした。壁掛けの時計は、当たり前のように刻一刻と時を刻んでいる。

──いや駄目だろ。

ふみのことだし、俺が来ないとバスを見送って待っているだろう。結果、俺は普段通りを装って出勤できるけれど、ふみは遅刻。見事、唆すだけ唆し、後始末を怠った悪い大人の完成だ。