𓇬𓂂𓈒
本編がはじまる、少し前のおはなし
𓂃 𓈒𓏸
小学校も、中学校も徒歩通学。
初めてのバス通学だった。
バスだって、バス。
初めてを経験する度に大人に近付いた気がした。
胸のワクワクが止まらないの。
でも、その分不安も大きくて。
「(行き先、まちがえたらどうしよう……終点まで気づかないまま乗っちゃって、遅刻したら……パパが先生に怒られちゃう……!!)」
なーんて心配を抱えた初めての登校の日。
シワのないブレザーと、可愛い配色のスカートを身にまとうと胸が弾んだのに。
買ったばかりのリュックもなんだか重たくて、憂鬱な気持ちを閉じ込めてバス停で待っていたら「そんな間違い、ある?」と、大好きな声が落っこちてきたの。
「エッ!?」
見上げると、正義のヒーローみたいに登場したのは、灰慈くんだった。
なんでここにいるの!?とか、朝からかっこいいね、灰慈くん!とか、今日も好きです!とか。聞きたいことは一瞬で山ほどあるのだけど。
「なんでわたしが考えてること分かったの?」
まずはこれを問い詰めたい。すると、スーツ姿が眩しい灰慈くんは、大人な微笑みを浮かべた。
「ぜんぶ声に出てたよ」
「え!うそ!いつのまに!?」
「本当。声かけるの迷った」
ガーーーン。と、ショックの音が鼓膜の内側で響いた。でも、灰慈くんと会えたので、すぐに持ち堪える。



