メルティ・エモーション



「いいよなあ、年下の奥さん」

出雲は羨ましがるが、この男も相当な愛妻家である。

「奥さんじゃなくて婚約者」

「雪が言うと面白いな」

「もうすぐ結婚するから正真正銘奥さんだな」

「お前、案外一途だったんだ」

心外だ。

「ずっと一途だよ俺は」

ふみが高校を卒業してすぐに同棲を始めてもうすぐ六年。ささいな喧嘩は稀にあるけれど、そんな喧嘩も愛おしい。


家路につく。俺にとって、家を出るその時が一日で一番の孤独で、帰宅時ドアを開ける瞬間が一番の幸福だ。

「灰慈くん、おかえり!」

長い髪を揺らして俺の胸に飛び込むふみ。その笑顔は幼い時から全く変わらない。

「ただいま。ふみ、今日もいてくれてありがとう」

「ふふ、こちらこそ、いつも帰ってきてくれてありがとう」

ふみのおかげで、俺の明日はふたつになった。そしてそれらはいつか増えるごとに、俺たちの幸せもまた増えてゆくのだろう。


メルティ・エモーション【完】