𓂃 𓈒𓏸
USBを抜き取り、ケースに仕舞う間にファイルを添付したメールが送信されたことを確認してパソコンの電源を落とした。荷物を詰め込んだビジネスバッグを片手にオフィスを後にする。
「(腰、痛え……)」
疲れが昨日の寝不足に直結していることは顕著だ。けれど、今日はなんとしても定時上がりを決めていた。
エレベーターの前で同僚の出雲を見た。先日禁煙宣言をしていた男だ。すれ違う時に、一応「お疲れ」と声をかければ「…………は?」と、出雲は目をパチリとさせて、何かを思い出したように俺の肩を掴んだ。
「待て待て、待て待て待て、何先に帰ろうとしてんの?」
「仕事終わった。帰る」
事実を言った迄だ。しかし、出雲は眉間のシワを伸ばそうとしない。
「騙されない」
「騙そうとしてない」
「誰に押付けた」
俺は相当信用がないのか、酷い同僚だ。
「押し付けてない」
早く帰りたいのですぐに返事をする。
「来週が提出期限で、模型が終わりそうにないからギリギリになるって言ってたのが先週の飲みの話で、昨日も徹夜だって言わなかった?サボっていいのかよ」
「完成したから帰る、先方には提出したし、部長も周知済み。じゃあ」
「なんで今日に限ってそんなに急いでんの?ねえ雪ちゃん?」
「今日、ふみの誕生日だから」
事実をいえば、出雲はなるほどと頷いた。



