「可愛くなったねって言ってくれた。わたし、灰慈くんのために毎日可愛くしてるから、そう思ってくれて嬉しいですって、言った」
これはまちがいなく本心だ。だから、灰慈くんが「可愛い」って言ってくれる度に、わたしはうれしくなる。
「ずっとそうあってくれるように努力するよ」
「まって、それは困るよ。灰慈くんが努力したらもっと好きになるし、ライバルが増えるのはやだもん。そのままで十分素敵だから!」
だから……と言い訳をさがしていると、灰慈くんはわたしに向かって、ひとこと。
「おいで」
と手を差し伸べた。そのまなざしに、飽きることなく新鮮にときめく心。おいで、の行き着く先が膝の上だと理解した上でさそわれた。何度も練習させてもらっているくせに、未だにどきどきする。勇気をだして、えいや!とちょこんとその上に座ると、灰慈くんはわたしの身体に手を回し、お腹の前でゆったりと手を組んだ。
「ふみは学校好き?」
背後からやさしく問い掛けられる。
「うん。大好き。毎日、ここに灰慈くんがいたらなあって思ってたから、今日は本当にうれしい」
灰慈くんの声がいつも通り穏やかだから、わたしの心も次第に落ち着いた。



