お腹いっぱいになるまで写真を撮った。今日だけで灰慈くんのスマホにあるわたしのフォルダがたくさん埋まったんじゃないかと思う。
校内を堪能したあと、灰慈くんが昼休みによく利用していたという非常階段に行った。日当たりの悪いコンクリート作りの階段はすこし寒かったけれど、わたしのこころはずっとぽかぽかとしていた。
「すごいな、ここは全然変わってない」
「そうなの?」
「すごいことだよ」
「(そうなんだ……)」
灰慈くんはブレザーを脱いで「どうぞ」と、隣に敷いてくれた。こんなところまで王子さまだ。灰慈くんのブレザーの上に座るなんて、とわたしの中の女子が叫んだけれど、灰慈くんのやさしさは受け取るべきだと恋心が教えるから、「ありがとう」と有難く受け取る。
「じつはこないだ翠織さんのお店に行ったんだ」
「まじか」
何も知らないままで会うことと、灰慈くんの元カノだって知った上で会うのではまったく違った。緊張したし、会わなければいいのにと怖くなった。けれど、ずっと会わないままはいやだから、わたしはわたしを奮い立たせた。



