ゆるく結ばれた灰慈くんのネクタイに触れた。
「ネクタイの色もおそろいだから、同級生みたいだよ」
「今日だけ限定で同い年ってことで」
「同い年……よりも先輩が良い!絶対に絶対に先輩!雪平先輩、好きです!」
「うん。ありがとうね」
よしよしと頭を撫でられる。きっと、当時の灰慈くんはそのようにして告白をあしらっていたのだろうか。ちょっとめんどうそうな態度で、けれど表情や言葉遣いには出さず、気持ちを受け止めていたにちがいない。
「……何その顔」
うっとりとしていれば、灰慈くんは眉を下げて笑う。困ったような、呆れたような表情も愛おしい。
「当時の女子の気持ちに浸ってる」
そう考えると、たしかに、年が近くなくて良かったかもしれない。疑似体験でこの胸の高鳴りようだ。わたしの心臓は過労で死んでいたかもしれない。
「ふみにしかしないよ」
「!」
灰慈くんがわたしの心臓をおだやかにたくましく育てくれたから、いま耐えられていると思う。
嬉しいし、どきどきするけれど、不思議と心は穏やかだった。



