メルティ・エモーション



隣の空き教室で着替えて、それから教室へ戻った。すると、灰慈くんは一人なのに数人に接客されているし、なぜか写真まで撮られている。わたしよりも先に。

「生灰慈くんえぐいー」

「かっこよすぎて涙出てきた」

「ありがとう、泣かないで」

ファンサが神対応なのはさすがわたしの王子さま!なんだけど、こんなときにもモテちゃうなんて聞いてない。

「わたしもまだ写真撮ってないのにー!ずるいよ!」

「ごめーん!ふみと灰慈くんの写真も撮ったげるから、寄って!」

みんなにかわいく謝られたうえスマホを向けてくれるから、許すしかない。

「……公開処刑されてる気分」

そんな灰慈くんは両手で顔を覆い、項垂れている。アンニュイな表情も素敵だ。制服姿なのでさらに輝いている。灰慈くんは正義。

そして、この騒ぎを聞きつけたひとがいた。

「不審者が出たのはここですかー」

突然、人聞きの悪い言葉と共に教室にずかずかと侵入したのは、見回り中らしいパパだ。

「今度制服着ますって、おれ、久遠寺先生に許可取りました」

「え……そうなの?」

いつ取ったのか、わたしの知らないところで二人は話していたらしい。

「学祭中とは聞いてない」

パパはシラを切るけれど、灰慈くんのことだから、ちゃんと許可を取っていたに違いない。