メルティ・エモーション


「どうしてこんなに、年齢が離れちゃったのかなあ」

仕方ないけど、分かってるんだけど、無意味なたらればなんだけど、考えずにはいられないんだ。

「灰慈くんと同じ時期に制服が着たかったし、灰慈くんと同じ時に、価値観を育てたかった」

もしも、もしも、もしも。なんど考えただろう。考える度に、打ちのめされることを知っているのに。

「俺はふみと同い年じゃなくて良かったと思ってるよ」

けれど、灰慈くんはちがうらしい。

「どうして?」

思わず顔を上げた。好きなひとが、困ったように微笑むのを見た。

「高校生の頃の俺は優しい人間じゃなかったから、ふみを傷つけてたかもしれない」

「……そうかな?」

「そうだよ。たぶん、宝物を大事にできるようになるために離れたんだろうね」

「宝物?」

「宝物を、めいっぱい甘やかすためかもしれないな」

灰慈くんの手がわたしの頭を、労わるように、至極丁寧に撫でる。

わたしはほんとうに何者でもない。褒められるほど大層な人間でも、敬われるほど尊い人間でもない。

そんなわたしを、宝物とたとえてくれる。

日々、灰慈くんへの恋心を募らせていただけなのに、こんなふうに眩い光が待っていたのだ。