メルティ・エモーション


ごめん、を言おうとした。

「ごめんな。嫌な思いさせた」

けれど、灰慈くんの方が先だった。

わたしの方がごめん、なのに。
灰慈くんが謝る必要、どこにもないのに。

言葉が喉の奥につまって、何も言い出せずにいると、灰慈くんが口を開いた。

「ふみのこと傷つけたかもって連絡が来て思い出した。そういえばあいつの店、りんご飴専門店だったこと。言われないと思い出さない程度の認識だった」

「そう、なんだ……」

翠織さん、灰慈くんにまでフォローしてくれたんだ。
大人ならではの配慮に、こんな時まで差を感じてしまう。勝てっこない。勝てるわけがない。

膝から力が抜けて、よろよろとしゃがみこんだ。

「ふみ、どうした」

灰慈くんの声が真上からおっこちると同時、背中に手を当ててくれた。

「……今からわたし、すっごく弱くなっていい?」

「いつでもいいよ」

しずかで落ち着いた声。不安な時、眠れない夜、いつでもどんな時でも”ひとりじゃないよ“って導いてくれる、まるでお星さまみたい。けれど、お星さまは自分が光っていることをしらないんだよね。灰慈くんはわたしにとってお星さま。手を伸ばしても追いつかない人。わたしはずっと、お星さまに憧れて、しゃぼん玉のスピードで追いかけている。